蜜味センチメンタル
軽い朝食を食べた後、2人はデートに出かけた。
商業施設の前ではバレンタイン向けのチョコレートフェアが開かれていて、色とりどりのパッケージが並ぶディスプレイには、つい目を奪われてしまう。
けれど羅華たちが最初に向かったのは、そこではなく、小さな公園だった。
「え、ここ?珍しいね、那色くんが公園とか」
「最近整備されたみたいなんですよ。梅が見頃って、ニュースで見て」
「梅……もうそんな季節なんだ」
柔らかな光の中、まだ蕾の多い枝先に、いくつかの花が咲いている。ほんのりと香る甘い匂いに、羅華の心がふわりと和らぐ。
「はい、立って。背景にぴったり」
「え、写真撮るの?」
「当たり前じゃないですか。今日は“春待ちショット”ですよ」
そう言って、那色はスマホを構える。
羅華が少しだけ照れながら枝の前に立つと、那色が羅華の腰に手を回し、抱くようにしながら並んだ。
「はい、撮りますよー。笑って?」
カシャ、とインカメのシャッター音が響く。ただのツーショット写真。けれど何でもないはずの風景が、特別に変わっていく気がした。
「ねえ、羅華さん」
撮った写真を確認する羅華に、那色から声がかかる。
「ん?なあに?」
「バレンタイン、何が欲しいとか訊いたらダメですか?」
「……えっ…」
こっちが用意するつもりだったのに、と羅華は少しだけ困惑する。