蜜味センチメンタル
「……僕は、羅華さんがどんなふうでもいいんです。弱くても、強がってても、泣いてても……どんなあなたでも、好きだって思うから」
「那色くん……」
「だからこれからは自分を疑わないで。僕が大事にしたいと思うのは、羅華さんだけなんだから」
視線はまっすぐで、言葉はやわらかい。けれど揺るぎなかった。
ふたりの間をさあっと静かな夜風がすり抜ける。
手のあたたかな温度だけが、確かにそこにあった。
羅華はしばらく言葉を失い、那色を見つめた。そのまっすぐな瞳に、いつか夢見た幸せな未来が重なるような気がして──胸の奥がじんと熱くなる。
「……ありがとう」
ぽつりと呟くと、自然と涙がこぼれていた。
驚くほどあたたかくて、優しい涙だった。
那色はそっと、親指でその涙を拭う。
「泣かないでくださいよ。……せっかく、やっと会えたのに」
「ごめん……でも、うれしいの。こんなふうに、ちゃんと気持ちを向けてもらえるのが」
那色が微笑んだ。その笑顔を見て、羅華も静かに笑った。
「ねえ、那色くん」
「うん?」
「今日はこのまま……一緒にいてくれる?」
那色は一瞬だけ目を見開いたあと、ふっと優しく目元を緩めた。
「最初から帰るつもりなんてなかったですよ」
その一言が、まるでお守りのように胸に響いた。
夜風は少し冷たくなってきていたけれど、手を繋いだまま歩き出したふたりの間には小さなぬくもりだけが宿っていた。
肩が自然と触れ合うたびにどこかくすぐったくて、でも不思議と安心する、しずかなあたたかさ。重ねた手の温度が、夜の静けさの中で、やわらかく、やさしく、包んでくれていた。
夜道を歩くふたりの影は、同じ鼓動の中で揺れていた。
ただ隣にいるだけで、怖いものなんて全部、なくなっていく気がした。