蜜味センチメンタル
「……──ほんとう?」
その問いかけは、かすれていた。
少しの不安が混ざっていた。でもどこかで信じたいという気持ちが、確かにそこにあった。
「もちろん。だって、好きだから」
そう言って那色の手が、そっと差し出される。
その手を見つめる。見慣れたはずなのに、今はまるで初めて差し伸べられたもののように見えた。
そっと自分の手を重ねた。重なる瞬間、胸の奥にぽっとあたたかな灯がともった。
羅華はうつむいたまま、小さく笑った。照れ隠しのようでいて、泣きそうな笑みだった。
「……うれしいのに、苦しくなるの、なんか変だね」
ぽつりとこぼれた声は、夜風に溶けるように頼りなかった。
「那色くんの事ちゃんと信じてたのに……藍良が君のそばにいるのを見て、すごく不安になった。自分でも情けないなって思うくらい」
那色は何も言わず、そっと手を握り返す。そのぬくもりが、何よりもの答えだった。
「私……自信がなかった。不倫した親がいて、いじめられてて……心のどこかで、ずっと私はきみの隣にいていいような人間じゃないかなって思ってた。那色くんがくれる言葉は、いつもまっすぐで優しくて……それなのに、私は……」
そう打ち明けながら、羅華はスッと顔を上げた。夜風に髪が揺れる。その奥の瞳には、ほんの少しの決意が宿っていた。
「でも……これからは、自分の気持ちをまっすぐ伝えたい。那色くんが大好きって、ちゃんと自信をもって言える自分でいたい」
「……うん」
震えるようにそっと重ねた手は、それでも確かに那色の指を包んでいた。