蜜味センチメンタル
同僚に並んで受付まで赴く。
対処を重ね、しばらくして混雑が落ち着くのを見届けてから那色は受付の社員に一言断ってホールへ向かった。
会場内のレイアウトは既に万全に整っており、那色はひと息分だけ視線を上に向けた。
式典本番まではまだ時間はある。だが張り詰めた緊張が、少しずつ現場に浸透してきていた。
あわただしく関係スタッフたちが動き回る中、全体の進行状況が今の時点でどうなっているかがふと気になった。映像を通して把握しておいたほうがいいと思い、ロビーから離れ、モニタールームへ向かった。
部屋のドアを静かに開けると室内は薄暗く、数枚の画面が淡く光っていた。
それらを入念に確認する中、そのうちのひとつに、彼女が映っていた。
(あ、羅華さんだ)
黒のパンツスーツに身を包み、スタッフに指示を出している。その姿を見ただけで、視線がやわらいだ。
声は聞こえないが、身振りや目線の配り方でおおよその状況はわかる。歩くテンポに無駄がなく、誰よりも早く次の段取りを捉えていた。
(……仕事のときの顔は、こんな顔なんだな)
那色の目元が、ふっとやわらぐ。
いつも自分の前ではすぐ拗ねたり甘えたり、頬を膨らませたり、言葉に詰まったりして、可愛い姿ばかり見せるのに。今の彼女は、ひたすらに手際がよくて、頼られていて、かっこよかった。
(……これがいわゆるギャップ萌え、か)