蜜味センチメンタル
そんなやり取りをしつつも「用意してくるからちょっと待ってね」と離れた場所にいた店員に声をかける。その大和の行動に、羅華は首を傾げた。
「大和さんが作るんですか?キッチンの方いませんでしたっけ」
「それが彼、趣味のハンドボールで腕を捻挫して休んでるんだ。だからしばらくは俺がキッチンと兼任」
「あらら…それは大変ですね」
「そういうわけで俺は少し席外すけど、代わりの子置いておくから相手してあげて」
「代わりの子?」
そう聞き返したところで、大和の呼んだスタッフが近づいてきた。
「那色。俺は少し裏にいくから、彼女のお酒頼んだよ」
「分かりました」
那色と呼ばれた男はそう言って羅華に視線を流し、にこりと微笑んだ。
「こんばんは」
「こ、こんばんは…」
向けられた顔立ちがあまりに整っていて、羅華は思わず身じろいだ。
優し気なベビーフェイス。丸い瞳と羨ましいほどに白くきれいな肌は美しいと表現するに相応しい。その体つきも細身ながら均整が取れていて、黒シャツの無造作に開けられた首元は妙に色気を放っていた。
恐ろしい程の美貌を放つ青年に怖気づきながら、こちらもタイプは違うがかなりの男前に違いない大和におずおずと声をかける。
「大和さん、この方は…?」
「先週から新しく入った子だよ。まだ大学生だけど、気兼ねしなくていいからね」
「あ、はい…」
羅華の返事を聞くと大和は裏へ消えていく。それを見送り再び那色へ視線を移すと、彼の白魚の手が優雅に動いていた。
「羅華さんと仰るんですか」
「え?」
唐突にかけられた声に思わず声を上げる。
「店長がそう呼んでいたのを聞いていて。無粋でしたか」
「あ、いえ。そんなことは…」
「では僕もそうお呼びしても?」
「はい。どうぞ…」