蜜味センチメンタル
大学生にしては物怖じしない子だな…。そう思いながら、羅華は那色を見つめる。
今年で26を迎えた羅華より少なくとも4つは年下になるが、自分が学生の頃はこんなに落ち着いていただろうかとぼんやり見つめる。そして間も無くの後、音もなく目の前にソルティドッグが置かれた。
「お待たせしました」
「…ありがとうございます」
ゆっくりとステム部分を指でつまみ、口へ運ぶ。グラスの縁に塗られた塩の塩味とグレープフルーツのさっぱりとした口当たりはいつも通り飲みやすい。
一口飲んでテーブルへ置くと、再び那色が声をかけてきた。
「お仕事、大変そうですね」
名前といい、大和との会話が聞こえていたんだろう。だが未来に夢を抱く若者に社会人生活の愚痴を吐くのも気が引けたので、羅華は笑って誤魔化した。
「普段はちゃんと土日はお休みなんですよ。けど今日はイレギュラーがあって…」
「そうなんですね。失礼ですが、お仕事は何を?」
「広告代理店の営業です」
「なるほど。休日のお仕事、お疲れ様でした」
そう言って笑った微笑みはまるで天使のようで、大和とはまた違った意味で癒されていくのを感じた。
いつも後輩に振り回されているため年下に対していいイメージは無かったが、やはり先入観はいけないなと密かに反省する。
「那色さん…でしたっけ。大学生って伺いましたけど、何年生ですか?」
「那色でいいですよ。あと敬語も要りません。学年は4年生です」
「あ、じゃあお言葉に甘えて…」
要らないと言われたものを強要するのも違うので、羅華は改めて「那色くん」と呼んだ。
「4年ってことは今年度で卒業かな。就職ももう決まってる頃だよね?」
「はい。卒論もほぼ終わってるので、最後に少し経験したことのないバイトをしてみたくて」
「それでここに?」
「丁度人手が足らないと店長から声をかけてもらって、卒業まで雇ってもらいました」
「大和さんとは知り合いだったの?」
「はい。まあちょっと」