蜜味センチメンタル

年下にいいように遊ばれて、振り回されて。それでも文句ひとつ言えない自分が恨めしい。

——彼とは、何もかもが違う

羅華を甘やかす優しい瞳も、宝物にでも触れるかのような、繊細な手つきも。

那色は自分勝手で、デリカシーも無くて、毒舌。年下は苦手なはずだ。なのに今、羅華の中にはこれまでに無い感覚が羅華の中に生まれ始めていた。

「じゃあ、連絡先もゲットしたんで今日はこのまま帰りますね」

そう言ってのんびりと腰を上げた那色は、ふと立ち止まりわざとらしい笑顔を向けてくる。


「羅華さん、大きめのアウター持ってません?ストールとかでもいいんですけど」

「…大判のマフラーならあるけど…」

「それで構いません。貸してください」

外寒いんで。那色はそう続けた。

「明日返しに来ます。バイト終わったら連絡するんで会ってください」

「…私に夜中まで起きとけってこと?」

「休みなんだからいいじゃないですか」

勝手すぎる。けれど実際に外が寒いのは確かで、文句も言いきれず羅華は渋々部屋の奥へ向かう。そしてクローゼットからマフラーを取り出して戻った。

「…はい」

「ありがとうございます」

那色は受け取ったそれをさらりと肩に巻きつける。その動作に見とれていた羅華が、ふと我に返った瞬間。

視線がぶつかる。

その流れのまま、那色の唇がふわりと額に触れた。

「!」

「ではまた明日」

言葉だけなら丁寧で紳士的な別れの言葉を残し、那色は帰って行った。

ぽかんと立ち尽くしたまま額に手を当てる。じわりと熱が残るそこに、やけに意識が集中する。

羅華はしばらく、ドアの前でただ立ち尽くしていた。





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