蜜味センチメンタル
その間抜けな声に、那色が吹き出した。いたずらっぽい笑みを浮かべながら、指先をそっと離す。
「……ふ、へんなかお」
一瞬むっとした羅華が軽く睨む。しかし那色は、その視線などまるで気にも留めないように、やわらかな笑みを崩さなかった。
「でも、会えてうれしいです。今日は特別な日ですから」
その言葉に、羅華は胸がじんと熱くなった。クリスマス当日。ふたりが付き合い始めてちょうど一年になる記念日。
広告代理店の営業として日々駆け回る羅華にとって、年末の12月は一年で最も忙しい時期だ。那色もまた、大手食品会社の次期後継という立場から、宴席や会食に引っ張りだこになる。
互いに余裕のない日々を過ごしながらも、どうしても今日だけは譲れなかった。
お互いに死ぬ気で時間をやりくりして、ここに並んで立っている。
そのために羅華は定時で仕事を切り上げ、いったん家に帰って髪も服も丁寧に整えてきた。
「……羅華さん」
名前を呼ぶ声が、冬の冷気にやわらかく落ちる。那色はじっと彼女を見つめ、ふっと目を細めた。
「今日はまた、一段とかわいいです」
ストレートな言葉に、頬がかっと熱を帯びる。
「わざわざ家に帰って着替えてきてくれたんですよね?」
「え!?な、なんで知って……」