蜜味センチメンタル
「だっていつも仕事にはシンプルな装いで行くじゃないですか。それとも、こんな明らかに『今夜はデートです』ってわかるような服で仕事してたんですか?それはそれで、羅華さんが僕のだって公言できてるみたいでうれしいですけど」
「ち、ちが……っ」
「それはどっちの否定?」
からかうように首をかしげる那色の表情に、羅華はまたむっとして唇をとがらせた。頬を赤くしたまま、視線を逸らす。
「……もう!意地悪な那色くんなんて知らない」
少し拗ねた声音が零れると、那色は小さく笑い声を洩らし、降参したように両手を上げた。
「失礼しました。反応がよくて、つい遊んじゃいました」
「…………」
「羅華さん、機嫌なおして?冗談抜きで、本当にかわいいですよ」
その視線は真剣さよりもさらに甘やかで、愛しさを隠しきれない光を宿していた。羅華の姿をひとつ残らず抱きしめるような眼差しに、胸がひどくざわつく。
恥かしさで視線を戻せなくなった羅華に那色は一歩近づくと、まるで舞踏会の場面のようにうやうやしく彼女の手を取り、その甲へ軽く口づけを落とす仕草を見せた。
「ではお姫様の機嫌を損ねてしまったお詫びとして、エスコートさせていただいてもよろしいですか?」
「お、お姫様って……」
「はい。僕にとっては、ずっとそうですから」