蜜味センチメンタル
「だからこれは、“いつか左手の薬指を予約するため”の証です。ずっと一緒にいたいっていう、僕なりの気持ちの形」
眩しさに視界が滲む。
「……本当に、私でいいの?」
震える問いかけに、那色は迷いなく頷いた。
「あなたとの未来しか、考えられません」
自然と笑みがこぼれ、気づけば彼の手にそっと触れていた。差し出された小箱に重ねるように指先が添わり、互いの指が絡み合った瞬間、そこに確かな温度が生まれる。
「ありがとう……」
胸の奥からこみ上げる熱に堪えきれず、羅華は涙ぐみながら那色の肩へ身を寄せた。鼻先をくすぐるマフラーが少し邪魔で、思わず笑みがこぼれる。
「……外だと、つけられないね」
「渡す場所、間違えましたね」
わざとらしく肩をすくめる那色の仕草に、二人の間に小さな笑いが広がった。
ふと顔を上げると、真上には柊の枝が影を落としていた。冬のイルミネーションの光に照らされ、赤い実がきらりと瞬く。
その下で交わす告白には、永遠や幸運を願う意味がある。
彼ならこの意味を知っていてこの場所を選んだんじゃないか。言葉にしなくても伝わってくる彼への信頼が、胸の奥をやわらかく満たしていった。
「那色くん」
小さく呼びかけると、彼は優しい声音で「はい」と応え、そっと肩を抱き寄せてくる。
「大好きだよ」
自然に漏れた素直な言葉に、那色の腕がきゅっと強まった。
「僕もです」
低く甘やかな囁きとともに、彼の手の力が確かに伝わってくる。その手に自分の手を重ね、互いの温もりを確かめあった。
「……これからもずっと、一緒にいようね」
「ええ。ずっと」
冬の光に包まれて交わした約束は、まだ“婚約”という形ではない。
けれどそれは確かに、ふたりが家族になる未来へと続く──最初の一歩だった。