蜜味センチメンタル
「ええ。去年も同じ並木を歩きましたね」
「覚えてるよ。那色くんが何も準備してないって謝ってくれて、いらないって言ったら拗ねてた」
「よりによってそこを思い出すんですか」
「だってかわいかったから」
「かわ……いや、いいです。ひとまずはそれで」
二人の間に小さな笑いが広がる。その余韻の中で、那色はふと足を止め、ポケットに手を差し入れた。
少し迷うように視線を落とし、それから意を決したように口を開く。しばらく無言で並んで歩いたあと、那色がふと足を止めた。
「……羅華さん」
「ん?なに?」
「去年の挽回とか、けっしてそういうわけではないんですけど」
言葉の調子とは裏腹に、その声音はわずかに硬さを帯びていた。ポケットに差し入れた手がためらうように動き、街灯の下で長い影が揺れる。
私の胸もつられて高鳴り、次の言葉を待つ時間が妙に長く感じられた。
「……渡したいものがあるんです」
そうして差し出された小さな箱。
リボンをほどき、蓋を開けると、中には細いチェーンのペアネックレスが収まっていた。
シンプルで、けれど温もりを秘めた輝き。胸の奥が一気に熱くなる。
「これって……」
言葉を探す羅華に、那色は真っ直ぐな眼差しを向ける。
「本当は、指輪を贈りたかったんです。でも、まだ社会人二年目で、未熟な自分には今はそこまでの資格がない気がして……」
言葉を選ぶように一度目を伏せ、そして再び真剣な瞳で見つめてくる。