蜜味センチメンタル
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週の中日は、どうしても気が重くなる。
それに加えて、ついさきほど羅華には新たな問題が降りかかっていた。

「育休…ですか」

最近子どもが生まれたという先輩社員が、妻の体調不良を理由に育休を申請することになった。

そしてその先輩が抱えていた仕事の一部が、羅華に引き継がれることになったのだ。

「忙しいときに本当に悪いな!原岸」

目の前で両手を合わせて謝る加藤(かとう)に、羅華は「いいえ」と返した。

「けど私でいいんですか?加藤さんの担当先ってどこも大手じゃないですか」

羅華もいくつか担当を持ってはいるが、どれも中小企業ばかりで大手は経験がない。未経験のフィールドを任されることへの不安が、少しだけ声に滲んだ。

「他の奴らは手一杯だし、原岸も春には5年目だろ?そろそろお前に回しても大丈夫だろうって、上からの指示でもあるんだよ」

加藤は笑って肩をすくめた。

「他の奴らも手一杯でな。任せるって言っても、今回引き継いでもらうのはもうプロットも原稿も大方固まってる案件だから」

「そうなんですか。それは助かります」

少しだけ安心して答える羅華に、加藤は「とはいえ」と続ける。

「俺が戻ってきても、そこは引き続きお前が担当って話になってる。次に響かないよう、うまく回してくれよ」

「了解です」

軽く頷いてから、羅華は確認を取るように言った。

「ちなみに、私が引き継ぐのはどちらの会社でしょうか?」

「シスイ食品だよ」

「ああ…なるほど…」

名前を聞いた瞬間、聞き覚えのある社名に、羅華は小さく息を呑んだ。



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