先輩はぼくのもの

縮める距離


「怪我どう?痛み少し引いたかな?」

「はい、もう痛くないですよ。ありがとうございます」

今日も朝から可愛い先輩。


「バイト無理しないでね?わたし代わるよ」 

「大丈夫ですよ」

優しいね。
その優しさ、ぼくだけにしか見せちゃダメだよ?


「先輩と明後日一緒に働けるの楽しみです」


あっ顔を赤くした。
素直なんだから。


少しの間、身を引いたのが結構効果あったな。


「じゃあまたね」

「はい。また」


当たり前に一緒に行くようになった朝。
先輩の時間割になるべく合わせて授業組むの大変だったんだよ。

でもね、一緒に登校出来る日を今は減らしてる。

もっと先輩からぼくを求めてくるようになるまで、引くのも大事。


殴られてから1週間。
アイツらの様子が気になる。



「想汰!!アイツらがしたことほんとにごめんね!!わたしは想汰が好きでー…!」

あれから毎日言ってくるウザイ女。


「もういいから…。あの人のこと悲しませちゃダメだよ。ユキ可愛くてモテるだろうから」

あー、自分で言ってて吐き気する。


「想汰っていい子過ぎる…やっぱり好き…」

は?おまえ頭おかしいんじゃねぇの?
ぼくが本気でそう思ってるって信じてんの?


キモイ。


「ぼく…ユキと一緒にいるとツラくなるから…そっとしてて欲しいな?」

少し困った顔で言う。


「わ…わかった。でも…友達でいようね!」

そう言ってバカ女は去っていった。


自分が二股まがいのことしといて、友達でいようねってマジでバカ。

まぁ、そもそも全部わかってて利用してたのはぼくだけどね。
だから、揉めて終わるわけにはいかない。


詩先輩に気にかけてもらえることなら、なんでもする。
この…ずっと離れてた期間を思えばなんだって出来る。




だから


「あの狩谷を助けた女、なんかしねぇと気が済まねぇ。ちょっと怖い思いさせてやるか」


ぼくの大好きな先輩になにか危害が加わりそうなら


ザッ
「なに話してんの?ぼくも混ぜてよ」


その原因は全て消してやる。




——————————

今日から夏休み。

試験もなんとか無事終わった。



「ねぇ小田原って知ってる?」

「へ?なに?」

「あたしらと同じ2年の男!ソイツとその周りにいた奴数人が退学になったみたい」

「そうなんだ」

知らない人。


亜紀がスマホで画像を出した。
「コイツらだよ!グループチャットで流れてきた」


えっ…!

「この人たち…」


前に狩谷くんを襲った人たちだ。
あれからはもう大丈夫って言ってたけど心配だった…
でも退学になったんだ。
少しホッとした。

でも
「なんで退学?」


「素行が最悪だったらしいよ。外で女の子無理矢理襲ったり、弱そうな人からお金を巻き上げたり…噂では警察沙汰になってるって」

弱い人から……
狩谷くんも殴られて、酷い目に遭ってた。


そんな最低な人たち、こうなって当然だよね。



「あれ?先輩、こんにちは」

「狩谷くん」


噂をすればなんとやら。
狩谷くんと会った。


「あの…前襲ってきた人たちが…」

「あー、なんか退学になったみたいっすね。ホッとしました」

「わたしも…狩谷くん、またなにかされるんじゃないかって心配だったから」


ポンッ

え…
狩谷くんがわたしの頭を撫でる。


「詩先輩優しー。ありがとうございます」


トクンッ

やっぱりおかしいわたし。

なに喜んでんの…?
狩谷くんが可愛く見えて仕方ない。



「狩谷くん!今度飲みに行かないー?ってか、合コンしない!?」


は・・・??
わたしは亜紀のいきなりの提案に呆然としてしまう。


「だってさー、出会いないしさー。詩も部長と別れて傷心だしさー。」

「なに言ってんの亜紀!わたし、翔のことはもうなんとも思ってないし!」

「狩谷くん、イケメンだからイケメンな知り合い多いかなーと思って♪」


もう〜〜亜紀〜。
いい加減に……


「…いいっすよ。ただ、ぼくの歳はまだお酒飲めませんけど」


え!?了承した!!??


「そんなの全然〜!!夏休み、遊ぼうよ!!」

亜紀のこの積極的なところ、憧れるけどグイグイ行き過ぎて焦る。


「じゃ、また連絡するー♪」

「はい。わかりました」

狩谷くんは行ってしまった。
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