先輩はぼくのもの

新入生の狩谷くん


「1年生!?うちのサークル大人気なんでぜひ遊びに来てね!」

「お兄さんイケメンだねー!私たちのサークル来てよ」


入学早々、サークルの勧誘がウザイ。


「あ!入試の時からかっこよくて噂だった人だ!友達になってください!!」


は??
なにそれ


「無理」


どいつもこいつも顔で判断してくる。

しょーもない。



こんな奴らと絡むために大学(ここ)に来たんじゃない。



早く…会いたいな。



確か先輩の学部は…




ドンッ!!


校舎の角を曲がったところで人にぶつかった。



「わっ!ごめんなさい!!」


この声は…!
顔を見なくてもわかる。



「ぼーっとしちゃってて。怪我はないですか?」


詩(うた)先輩だ。



「…いえ大丈夫です。先輩は大丈夫ですか?」


「はい!大丈夫です…ってあれ?後輩??ん?年下???」

ぼくが【先輩】と言ったからか、首を傾げて考えている先輩。


あーーー可愛い。

神様、こんなすぐ先輩に会えるなんて
頑張ってきたぼくへのプレゼントですか?



「この春入学してきた経営学部の狩谷想汰(かりやそうた)です」


ぼくの自己紹介を聞いて、大きな目をくしゃっとつぶしてたまらなく可愛い笑顔で笑う。


「そうなんだ!じゃあ後輩くんだね!わたしは桜井詩(さくらいうた)です。同じ経営学部の2年生だよ」


「そうなんですね」

うん、全部知ってるよ。


「あっ!なんだか引き留めちゃってごめんね!」

え?全然だよ。
短すぎるんだけど。
このままずっと喋ろうよ。


「いえ、同じ学部の先輩と知り合えて嬉しいです」




「わたしも。初めて会ったのにこんなに話せて嬉しい!これからよろしくね!わからないこととかあったら、いつでも声かけて」


あぁ。やっぱり先輩は覚えてないよね。


「…はい。ありがとうございます」


「じゃあね!」



パシッ

去ろうとする先輩の腕を掴んだ。



「??どうしたの?」


焦っちゃダメだ。

やっと、ここまで来たんだから。



「ぼくたち…前に会ったことあると思います?今、初めてだと思います」


少し困ったような顔をする先輩。
あー、その顔も可愛い。
もっと困らせたい。


「えっと…はじめまして??」

会ったことあったら失礼だとでも思ったのか
すげー不安そうに恐る恐る言っている。


たまんない。


「正解♪すみません、ちょっとふざけました。これからよろしくお願いします」

ぼくは先輩の腕を離した。


「もう!ビックリしたよ!じゃあ、またね」



スマホを見る。
話した時間、5分ぐらい…か?

入学初日にこれは上出来だろ。



スマホの写真フォルダを開く。

桜の木を見上げている先輩の横顔。


あー、でも
やっぱ間近で見る先輩が1番だな。



「詩先輩、やっと始まるね」
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