先輩はぼくのもの
ガチャー…
「失礼しまーす…」
ガヤガヤしていた部屋が一気に静かになった。
「あれ…?狩谷くん!?」
いた。
「えっと…あっこの前会った先輩ですか?」
わざとらし過ぎた?
「うわー!偶然だね!どうしたの?ウチのサークルに興味あるとか!?」
わぁー先輩
今日も可愛い。
そんな可愛かったら、他の悪い虫がたくさん寄ってくるよ。
「はい、このチラシを見て。まさか先輩もいるなんてビックリしました」
嬉しそうにニコニコ笑ってる先輩。
今すぐ抱きしめたい。
「なになに〜このイケメンくん、詩の知り合い?」
「この前偶然知り合ったの。同じ学部の後輩だよ」
「そうなんだ!あたし、同じ学部の太田亜紀(おおたあき)だよ!よろしくね!」
詩先輩の仲良い友達だよね?
ちゃんと知ってるよ。
「狩谷想汰です。よろしくお願いします」
「新入生大歓迎!ぜひ入ってよー」
来た。
「詩の知り合いなんだね。よろしくね」
「…よろしくお願いします」
北村翔(きたむらしょう)
3年生で、このサークルの部長。
そして
「翔、狩谷くんと仲良くしてあげてね」
詩先輩の彼氏。
「もちろん」
ぼくのやるべきことリスト最上位にある
この男の排除。
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ゴールデンウィークも明け、少しずつ暑くなりだした頃。
「じゃ、今日バイトだからまた明日な」
「うん、頑張ってね」
キスをした先輩と北村。
それも今日までだよ。
先輩と北村が付き合い始めたのは半年ほど前。
ぼくがいるのに、あんなくだらない男に引っかかるなんて…
「あれ?先輩、今日はもう終わりですか?」
偶然を装って話しかける。
「狩谷くん!うん。もう帰ろうかと思って」
「そうなんですね。ぼくも帰りなんで途中まで一緒に帰りません?」
「いいの?帰ろう!」
当たり前でしょ。
先輩と帰れるなんて、今飛び跳ねたいぐらい嬉しいけど
がまんがまん。
「どう?大学慣れてきた?」
「そうっすねー…。移動に迷う時があります」
「そうだよねー。ここ、広いもんね」
ねぇ、先輩気づいてる?
「先輩このあと時間あります?ぼく、行ってみたいカフェがあってよかったら付き合ってほしいんですけど」
「いいよ。どこのカフェ?」
「電車乗って3駅先なんです」
この2ヶ月ぐらい、毎週火曜と金曜日に北村と会えてないの。
今日は火曜日。
「せっかくだし行ってみようよ」
「ありがとうございます」
どんな表情(かお)するかな?