先輩はぼくのもの

先輩、ぼくのものになる?


クーラーで涼しい部屋。
今日はバイトもなくて完全オフの日。

暑すぎるこんな日は家でぐうたらに過ごすのが1番。


続きが気になってた漫画、一気に読破しよっかなー。



・・・
必死に色んなことを考えるけど、ずっとチラつく狩谷くん。

気づけば自分の中で存在が大きくなってる気がする。


わたしはなんで狩谷くんを弟みたいな存在って思いたいんだろう。


ヴーッヴーッ

店長だ。


「もしもし」

「桜井さん、休みとこごめんねー」

「全然大丈夫ですよ。どうしましたか?」

「狩谷くんさ、熱出てるらしくて今日休むって連絡あって」


え…熱!?


「わたし入りましょうか?」

でもほんとは心配でバイトより狩谷くんのとこに行きたい。


「いや店は代わりの子見つかったから大丈夫。ただ、狩谷くん一人暮らしだから心配になってさ…桜井さん近所だって言ってたから連絡したんだよ」

「わかりました。連絡ありがとうございます」


狩谷くん、、こんな時に連絡してきてよ!



「お母さん、ちょっと出かけるから!」

急いで準備をして家を出る。
ひとまず、薬や食べ物とか買い物行こう。



ーーーーーーーーーー

「ゲホッゲホッ」

あー、最悪。
夏風邪ってやつかな。
食欲わかないし、喉激痛だし、だるいし
とにかく最悪。


先輩に会えないから元気出ない。


最近…先輩に意地悪し過ぎた罰?

だって先輩といると、計画通り進まなくなるから

なんか…狂わされる。


なんだよ弟みたいって……
意味わかんねぇよ。

やっと近づけたのに、そんなのアリ?



「ムカつく…ゴホッゲホッ」


ヤベ…クラクラしてきた。
頭痛のせいで目がチカチカする。



〔女みてぇな顔して気持ち悪いんだよ、おまえ〕

〔おまえの母ちゃん、不倫したんだろ?俺の母ちゃんが言ってたー〕

〔だからおまえ母ちゃんいないんだー〕


バシッ!
〔お父さん痛いよ!〕

〔近寄るな!あの女に似てるおまえを見るだけで吐き気がする!〕

ほっぺが痛い…
あれ…
心も痛い…


苦しいよ、助けて……









目が覚めると、汗だくになっていた。

夢…か。

胸くそわりぃ。



なにか飲み物…

ふらつく身体を起こして冷蔵庫を開けると、なにも入ってなかった。


水道水でいいか。



ピンポーンー…

誰だ?

無視をしているとまたインターホンが鳴った。



コンコンッ

「狩谷くん、詩です。起きてるかな?」


詩先輩!?

夢のせいで空耳か?


玄関までなんとか歩いてドアを開ける。


「狩谷くん!大丈夫!?」


あぁ、先輩。
ぼくの先輩。


「しんどい時にごめんね。熱が出てるって店長に聞いて」


うつしちゃうかもしれないけど
抱きしめたい。


ぎゅっ

「先輩…ありがとうございます」

あの夢から解放された気持ちになった。


「狩谷くん、しんどいよね。お薬とか買ってきたから、ひとまず寝よ?」


詩先輩は家の中に入ってきて、袋から色々出している。
すげー買ってきてくれてる。

「てかすごい汗かいてるね。着替えれる?」

「…先輩、着替えさせて」

「そんなこと言える元気あるなら大丈夫だね。自分で着替えなさい」


最近、ぼくの扱いにちょっと慣れてきてる??



着替えて戻ると体温計を持って待ってる先輩。
もう可愛過ぎるから。


「熱測って」


ピピッ

「えっ!!39度!?ヤバイじゃんか!!」

「あれだけ汗かいたのになぁー」

「なに呑気なこと言ってんの!?病院行こ!」


ガシッ
今は離れたくない。
咄嗟に先輩の腕を掴んだ。


「明日になっても下がってなかったら行くから…今は嫌だ」

顔を赤くして困った顔をする。
そんな先輩も安定の可愛い。

写真撮りたいけど、今撮ったら気づかれるしなぁ。


「早くベッド入って!とにかく寝なきゃ!」


氷枕におでこには冷却シート。


「なにか食べれそう?」

「食欲ないんで大丈夫です」

「うーん、それじゃ元気にならないよ」


普段じゃひとりで聞こえるはずのない、生活音っていうのかな?
先輩がいてくれてるんだって思うとそれだけで安心して眠れる。

さっきみたいな夢を見ずにいれるって思える。
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