先輩はぼくのもの

—————・・・


カチャカチャと聞こえる音。

誰か…いる?


数秒して意識がはっきりとした。

ガバッと起き上がると台所に先輩がいた。



「あっ起きた?そんな急に起き上がるとふらつくよ」

言われた通り、くらっとしてしまった。


「ほらー。大丈夫?」

先輩がぼくのそばに来てスポーツドリンクを渡してくれた。


「飲める?」

ぼくは頷いてドリンクを飲んだ。


「ゲホッいてっ…」

喉に激痛が走る。



「喉しんどいかな?お薬飲むために少し食べれる?おかゆ作ったんだけど…」


先輩手作りのおかゆ。
そんなの、なにがあっても食べるに決まってる。


でも…

「ゴホッ…先輩、これ以上一緒にいたら…うつしちゃうかもだから…」


ほんとは離れてほしくない。
でも、先輩にうつしたくもない。


「安心して!わたし、昔から風邪にかかりにくいの!」


なにそれ


「あはは…ゴホッ先輩は…やっぱりおもしろいね」


風邪じゃなかったら絶対抱きしめてた。
それぐらい可愛くて愛しくてたまらない笑顔。


あの時ぼくを助けてくれた天使の笑顔。



ベッドまでおかゆを持ってきてくれた。

「熱いから気をつけてね?」

「じゃあ先輩がふーふーして?」


絶対嫌がるだろうけど。
可愛くていじめたくなる、ぼくのこの性格なんとかしたい。


先輩がぼくからスプーンを取った。


「1回だけだからね」


うそ・・・


先輩がおかゆを冷ましてぼくの口へスプーンを向ける。


「はい、あーん…して?」

顔が赤い先輩。
ねぇ、先輩
弟に顔を赤くするの?

ぼくをからかってるの?


結局ぼくがいつも攻撃されて打ちのめされてるじゃんか。


ゆっくりと口を開ける。
そして先輩が食べさせてくれる。


「…うま」


「えへへ。よかった」


ぼくをどれだけ好きにさせたら気が済むの?
こんなに好きなのに、これじゃ足りないの?

なら言ってよ。
先輩が望むだけ愛をあげるから。



「薬飲める?」

「ケホッ…はい」


薬を飲んでまた横になる。
そして冷却シートを張り替えてくれる先輩。


「先輩、すみません。迷惑かけてばかりで」

「迷惑とかじゃないから。ゆっくり寝て?」


次起きたら…帰っちゃってるのかな。



キュッ

ぼくのそばから立ちあがろうとした先輩の服を掴んだ。



「先輩…そばにいてください……」


なに言ってんだ、ぼく。

あれだけ計算して計画して、先輩に近づいたのに
こんな情けない本音を出してしまって…


でも今はひとりになりたくない。



先輩はまたしゃがんでくれた。
そしてぼくに目線の高さを合わせてくれる。


「大丈夫だよ。ちゃんとここにいるから、安心して眠ってね」



〔大丈夫!わたしが守ってあげるよ!あんな奴らから!!〕


遠くなる意識の中で思い出す、先輩に出会った時のこと

ぼくの大好きな詩先輩………



ーーーーーーーーー

「う…ん……」

ゆっくりと目を開ける。


どれぐらい寝たんだろう。
身体がだいぶ楽になった。

カーテン越しに光はなく、夜になってるのがわかった。


左腕あたりに重みを感じた。
視線を落とすと詩先輩がうつ伏せて眠っていた。


あれからずっといてくれたの?


まだ冷たい氷枕に冷却シート。
きっと少し前に変えてくれたんだ。


腕の隙間から見える先輩の寝顔。
可愛くてたまらない。

頬にそっと触れる。



すき



「ん……あれ?起きた?体調どう?」

寝起きの顔も可愛い。

こんな可愛い先輩がほかの奴に触れられるとか
いや、見られることすらほんとは耐えられないんだ。



「わっもう21時回ってる!お腹空いた?なにか買ってくるね。いや、その前に熱測らなきゃだね」


ぼくの心配をしてわちゃわちゃしてる先輩。
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