先輩はぼくのもの
「想汰くん」
想汰くん、震えてる…。
不安にさせてるの?
泣きそうなの?
今朝の龍弥の言葉…?
「わたしは想汰くんが大好きだよ」
どんな言葉も軽くなってしまうんじゃないか
信じてもらえないんじゃないか
そんな気持ちが試行錯誤するけど
だけどやっぱり伝えなきゃ。
わたしの肩に顔を埋めていた想汰くんが顔を上げてわたしを見る。
「知りたい?」
泣きそうなのか赤くなっている想汰くんの瞳。
主語がなくてもわかる。
「…知りたいって言うのかな…えっと……」
知りたいだなんておこがましいのかもしれない。
「わかりたい。想汰くんを」
言葉が合っているのかわからない。
そもそも、偉そうじゃないか?わかりたいとか。
でも、そうなんだもん。
もっと想汰くんをわかりたい。
「嫌いになるよ」
「ならないし」
「なるから」
「ならないってば」
子どもみたいな言い合いをする
いや、まだ子どもなんだけど。
「…なにそれ、なんで言い切れんの?」
あ…まただ
瞳に光を宿さないような暗い目。
誰もよせつけないようにする目。
あなたをこんな風にしてしまう“もの”、全てから守りたいの。
「わたしを信じて」
受け止めさせてよ、想汰くんの全部を
わたしの右頬に触れる想汰くんの手。
冷たくてヒヤッとする。
「前も言ったよね?…嘘ついたら、許さないよ?」
冷めた目。
ゾクッとする言葉。
口先だけじゃないってわかる。
「先輩が嘘ついたら、ぼく死ぬから」
きっと、いや絶対
もう引き返せない所に来てる。
生半可な言葉や気持ちじゃだめ。
これは警告。
想汰くんからの最終警告だ。
ほら、なにも期待しない、信じない、受けつけない
そんな目をしてる。
…なめないでよ。
「死なせない。まずはわたしを信じてよ!」
わたしの気持ちをなめないで。
「わかるまで言うから。大好きって」
わたしは想汰くんを抱きしめた。
「想汰くんの全部が好きなの。わたしから離れるなんて許さない」
少し体が離れたと思った瞬間、わたしにキスをした。
「ん…!」
すぐに深くなる甘いキスに耐えれずその場に座り込む。
すると腰あたりから想汰くんの手が入ってきて、わたしの体を指でなぞる。
「あ…待って…」
「…ごめん先輩、待てない」
ブラのホックが外されて想汰くんがわたしの胸に触れる。
「あっ…!」
頭がボーッとする。
ダメだ、もうこれ以上なにも考えられない…
ん?
目に映ったのは玄関のドア。
・・・そうだ!ここ、玄関だ!!!
「ぜ…絶対あかんー!!!!」
わたしの急な関西弁と大声に目をパチクリさせている想汰くん。
わたしはその隙に急いで乱れた服を整える。
「想汰くん!ここ玄関だよ!!もし、、お母さんたち帰ってきたらー…!」
こんなところ見られるなんてありえない!!
「…ぶはっ!!」
焦ってるわたしとは正反対に笑いだした想汰くん。
「いや、面白すぎるから!なんで関西弁?」
さっきまでの張り詰めていた空気や想汰くんの表情から一変、笑顔に溢れてそれだけでわたしは嬉しくて泣いてしまいそう。
「先輩、ぼくの話聞いてくれますか?」
「…はい。聞かせてほしいです」
どんなあなたも受け止めるから。
「…じゃあ、夜中の電話のこと教えて?」
ハッ!!
そうだった!!
そもそもそれがことの発端だった!!
「…まぁ、もうなんとなくわかるけど」
そう言った想汰くんはわたしの首に貼っていた絆創膏に触れた。
咄嗟に離れたわたし。
「ケガですか?先輩」
ど、どうしよう、、、
怒る…よね
「ぼくにもちゃんと教えてよ」
震える手でわたしはゆっくりと絆創膏を剥がした。
「…どうしたの、それ」
低い声。
怒って当然だよね。
「ご、ごめんなさい…」
涙が溢れてくる。
結局わたしが想汰くんに嫌な想いをさせてる。
「なんで謝るんですか?…まさか同意したの?」
「そんなわけ…!!」
想汰くんの言葉に俯かせていた顔を急いで上げて否定しようとした。
するとそんなわたしの言葉を遮るようなキス。
「ごめんね、ひどい言い方して。先輩がそんなことするわけないってわかってるから」
そう言ってわたしの涙を指で拭ってくれる。
「…気づいてあげれなくてごめん。泣かせてごめんね」
そう言われたと思った瞬間、首にキスをされて鈍い痛みが走る。
「上書きしたから。これでもうなにも気にしなくていいよ」
龍弥が付けた跡の上から想汰くんが跡を付けてくれた。
「先輩、ぼくコーヒー飲みたい」
「あっ…!うん、すぐ用意するね」
「ありがとうございます」
わたしは急いでリビングに向かった。
「…あー、だりぃ。しょーもない挑発してきやがって」


