【番外編】橘さん、甘すぎ注意です
数日後。
涼しげなジャケットに身を包んだ航太と、淡い色のワンピースを着た紗良は、父・一ノ瀬大臣御用達の高級料亭に足を運んでいた。

静かな和室に通され、品の良い懐石料理が次々と運ばれてくる中、3人の会話は比較的穏やかに進んでいた――が、和やかさをほんの少し揺らす存在がひとつ。

和室の出入り口。そのすぐ脇に立つ、スーツ姿の男性。
旗野だ。

任務としては当然の配置だが、彼の視線はどうにも“意味深”だった。
まるで「警護の枠を超えた関係、しっかり見届けてますよ」とでも言いたげに、じわりと笑みを含む無表情を見せてくる。

「……なんか、やっぱ気になる」

小声でぼそっと呟いた航太のつぶやきに、紗良は箸を止め、そっと微笑んだ。

「旗野さん、きっと応援してくれてるよ。……たぶん」

「“たぶん”がつく時点で、安心できねぇんだよな……」

そう言いつつも、航太の頬にはわずかな緩みがあった。
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