私の愛した彼は、こわい人
第四章
 陽が昇りかけの時間。
 体が、妙に火照っている。
 私は彼の──ジンさんの腕に抱かれながら眠っていた。
 室内に小さく響く彼の寝息。無防備な寝顔。安心するこのぬくもり。
 なにもかもが、愛おしい。
 昨晩はじめて彼に抱かれたとき、これまでに経験したことのない絶頂を感じた。
 大好きな人と愛を交わすひとときが、あれほど安らげるものだなんて。これまでの私には知り得なかった。
 ジンさんが私にくれた「幸せ」。子どものときにリュウお兄さんがくれた台詞。

『幸せになれよ──アスカ』

 あなたは自身の行動と言葉で、私にあの約束を果たさせてくれた。

「ジンさん。大好き」

 眠る彼の唇にそっとキスを落とす。
 すると、ジンさんの瞳がゆっくりと開かれた。

「……アスカ?」
「すみません、起こしちゃいましたね」
「ああ……いいよ」

 寝ぼけた顔すらも愛おしい。
 ぼんやりした目で私を見て、彼は優しい笑みを溢す。

「アスカ、おはよう」
「おはようございます、ジンさん。もうすぐ夜明けです」

 壁にかかるデジタル時計をチラリと見ると、ジンさんは首を横に振った。

「もう少し、このままでいたい」

 甘えたようにそう漏らすジンさんは、ギュッと私を抱きしめてくれる。
 私だって同じ気持ち。
 できるならば、ジンさんと一日中一緒にいてのんびりしていたい。
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