私の愛した彼は、こわい人
「でもお手を煩わせてしまってますし」
「いちいち気にしなくていいんだよ。俺はアスカの用心棒(・・・)だからな」

 ……用心棒って言いかた。
 同居をはじめたあの日、彼は私を守ると宣言してくれたけれど。用心棒はさすがに笑いそうになっちゃう。

「あの、神楽オーナー」
「ん?」
「ご自宅にお邪魔してから平穏な日が続いて、私、すごく安心しているんです。本当に感謝しているんです」

 私の素直な気持ちを伝えると、彼の顔が綻ぶ。

「でも、オーナーもお忙しい身でしょうし。そろそろ送迎をしていただかなくても大丈夫ですからね」
「……あっ?」

 たちまち、彼の声が暗くなった。不機嫌そうに眉間にシワを寄せて。

「やめねぇけど」

 力強く、拒否された。缶ジュースを握る手が、微かに震えている。

「まだ、不安だ。……あの野郎が、いつまたお前の前に現れるかわからないだろ」

 彼にそう言われ、私はハッとする。
 ……タクトのこと、だよね。
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