モテ期なんて聞いていない!ー若手実業家社長の幼馴染と元カレ刑事に求婚されています


 子どもを諦めたらいい話だ。とはいえ、結果的に出来なかったのならともかく、あかりは結婚前から子どもを授からないと決めることも出来なかった。

 今日も家に着いたあかりは考える。


 (辞めるなら、颯さんじゃなくて……)

 頭ではわかっているのだ、警視庁という組織にどちらが必要なのか。
 自分は女だ。今は警察官も男女問わず昇給出来るし、福利厚生も整っている。だが、育休はともかく、子どもを産むことは女性にしかできない。
 妊娠中、そして産休の間は、思うように仕事ができなくなる。実際何人もの先輩警官がやむを得ず部署異動したり、復職しても当直や交代勤務はできないからと、負荷が軽い部署に移っていったのだ。

 颯との未来を選ぶと、どちらかが奉職し続けることはできなくなる。ならば理貴、と考えてみるが、どうしても幼い頃の記憶に引っ張られるのだ。

 年下の守ってあげないといけない、もう一人の弟のような男の子。

 驚くほど立派な青年になった理貴にキスをされ、愛を囁かれて心が動いた気がしていたのだが、会わないでいるとそれもまやかしだったように思えるのだ。
 それでもやり取りしたメッセージを見返すと、また気持ちがぶり返すから厄介である。

 高校生までは知っているけれど警察官であるあかりを知らない理貴と、反対に入職するまでのことは何一つ知らないけれど、警官になったあかりをよく知っている颯。

 二人を左右に乗せた天秤は、あかりの中で激しく揺れ動いていたのだった。
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