失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
私に対する謝罪も、言い訳もなにもない。とっさに言葉が出てこず、私は近くにあったクッションを思いっきり彼に投げつけ、家を出た。
なにも返せなかった自分が情けなくて悔しい。けれど今になって思うと、余計なことはなにも言わなくて正解だったのかもしれない。
とはいえ、いくら別れて半年以上経つとはいえ、彼の立場でよく声をかけられたと不快を通り越してあきれる。反応に困りつつ無視もできずにいると、彼はゆっくりとこちらに近づいてきた。
「久しぶり、元気してたか?」
何事もなかったかのような正也に、さすがにすべてを水に流してにこやかに答えるのは難しかった。
軽く一瞥し、そのまま去ろうとする。しかし彼は強引に私の腕を掴んだ。
「あのときはごめん。彼女とはほんの出来心だったんだ」
その口から紡がれた内容に目を瞠る。謝罪なのにばかにされた気分になって、逆に心がすっと冷たくなる。
「よく言えるね。彼女と結婚するから私と別れたんでしょ?」
「彼女との結婚はなくなったんだ」
皮肉めいて返すと、正也は慌てて補足してきた。けれどその情報は、正直どうでもいい。冷ややかな目で見る私に気まずさを覚えたのか、正也はふいっと視線を逸らした。
「本気で好きだったわけじゃない。言い寄ってきたのも向こうからなんだ。彼女、社長令嬢でさ、結婚したら会社を継いでほしいって言ってきて……。そうなると俺は次期社長だ。冷静に将来を考えたら、実家がレストランをしている未可子より、彼女の方を選ぶだろ? 誰だって心が揺らぐさ」
それを聞いて私が納得すると……慰められると思うのか。これならまだ、私よりも彼女のことを本気で好きになったと言われた方がよっぽどマシだ。
なにも返せなかった自分が情けなくて悔しい。けれど今になって思うと、余計なことはなにも言わなくて正解だったのかもしれない。
とはいえ、いくら別れて半年以上経つとはいえ、彼の立場でよく声をかけられたと不快を通り越してあきれる。反応に困りつつ無視もできずにいると、彼はゆっくりとこちらに近づいてきた。
「久しぶり、元気してたか?」
何事もなかったかのような正也に、さすがにすべてを水に流してにこやかに答えるのは難しかった。
軽く一瞥し、そのまま去ろうとする。しかし彼は強引に私の腕を掴んだ。
「あのときはごめん。彼女とはほんの出来心だったんだ」
その口から紡がれた内容に目を瞠る。謝罪なのにばかにされた気分になって、逆に心がすっと冷たくなる。
「よく言えるね。彼女と結婚するから私と別れたんでしょ?」
「彼女との結婚はなくなったんだ」
皮肉めいて返すと、正也は慌てて補足してきた。けれどその情報は、正直どうでもいい。冷ややかな目で見る私に気まずさを覚えたのか、正也はふいっと視線を逸らした。
「本気で好きだったわけじゃない。言い寄ってきたのも向こうからなんだ。彼女、社長令嬢でさ、結婚したら会社を継いでほしいって言ってきて……。そうなると俺は次期社長だ。冷静に将来を考えたら、実家がレストランをしている未可子より、彼女の方を選ぶだろ? 誰だって心が揺らぐさ」
それを聞いて私が納得すると……慰められると思うのか。これならまだ、私よりも彼女のことを本気で好きになったと言われた方がよっぽどマシだ。