失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
『早く結婚したらいいのに』
ぽつりとつぶやかれた光希のひと言に心臓が跳ね上がる。やはり彼にはそういう相手がいるのだろう。
さすがにそこは踏み込むべきではない。本題へと移り光輝さんにお礼とお詫びを兼ねた品と、バーで彼が支払ったお金を光希に託しておきたいと申し出た。
『それは、よかったら未可子から渡してあげて』
ところが光希から予想外の切り返しがある。
『えっ!?』
『お兄ちゃん、今日はなんかいろいろ用事があるみたいだけど、夜は家にいるだろうし。私から連絡しておくよ』
『い、いいよ。光希の都合のいいときに渡してもらえたら』
勝手に話を進める光希を慌てて制するが、彼女は強引にまとめ上げた。
結局、光希から光輝さんの住所と連絡先が送ってこられ、悩みつつ私は彼のマンションの前までやって来たのだ。彼の勤め先である警察庁合同庁舎とほどよい距離にあるマンションは、どう考えても富裕層向けだ。場違い感に足がすくみそう。
渡したら……すぐに帰ろう。
紙の手提げ袋には、現金を入れた封筒と桜風味のチョコレートの詰め合わせ缶が入っている。今の季節限定で、おいしいと話題になっていた。
両親の店のものではなく市販品とはいえ、チョコレートをまた渡すシチュエーションに意図せず胸が苦しくなる。けれど、ほかに彼の好きなものを知らない。光希にきちんと聞いておくべきだったかもしれないと後悔しつつ、これ以上彼に踏み込むのも怖い。
ぽつりとつぶやかれた光希のひと言に心臓が跳ね上がる。やはり彼にはそういう相手がいるのだろう。
さすがにそこは踏み込むべきではない。本題へと移り光輝さんにお礼とお詫びを兼ねた品と、バーで彼が支払ったお金を光希に託しておきたいと申し出た。
『それは、よかったら未可子から渡してあげて』
ところが光希から予想外の切り返しがある。
『えっ!?』
『お兄ちゃん、今日はなんかいろいろ用事があるみたいだけど、夜は家にいるだろうし。私から連絡しておくよ』
『い、いいよ。光希の都合のいいときに渡してもらえたら』
勝手に話を進める光希を慌てて制するが、彼女は強引にまとめ上げた。
結局、光希から光輝さんの住所と連絡先が送ってこられ、悩みつつ私は彼のマンションの前までやって来たのだ。彼の勤め先である警察庁合同庁舎とほどよい距離にあるマンションは、どう考えても富裕層向けだ。場違い感に足がすくみそう。
渡したら……すぐに帰ろう。
紙の手提げ袋には、現金を入れた封筒と桜風味のチョコレートの詰め合わせ缶が入っている。今の季節限定で、おいしいと話題になっていた。
両親の店のものではなく市販品とはいえ、チョコレートをまた渡すシチュエーションに意図せず胸が苦しくなる。けれど、ほかに彼の好きなものを知らない。光希にきちんと聞いておくべきだったかもしれないと後悔しつつ、これ以上彼に踏み込むのも怖い。