失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「光希と君が親しくなって家に出入りするようになった頃、申し訳ないが君や君の家族について調べさせてもらったんだ」

 そんな昔に……と驚くのと同時に、どこまでかはわからないが、やはり勝手に私や家族について調査されていたと聞いたら、気分のいいものではない。

「祖父が鷹本化成グループの代表で父が警察官なのもあってね。悪く思わないでほしい」

 出会った頃、光希が私と親しくなってうれしいと喜ぶ反面、いろいろな理由で自分に近づく人が多いからと話していたのをふと思い出す。

 選別されたのではなく、邪な動機で光希や光輝さんに寄ってくる人間は私が想像するよりずっと多いのかもしれない。

「でも、それだけで私と結婚なんて……」

 彼に紹介される相手は、おそらく私より身元もしっかり証明されていて、警察の世界にも理解のある女性たちだ。

 納得できない私に、光輝さんは不敵な笑みを浮かべた。

「妹の友人で、学生の頃からお互いを知っている。十分な理由じゃないか? なにより、君は好きでもない男と割りきって結婚できる人間なんだろ?」

 ああ、そうか。光輝さんが望んでいるのは、気持ちなどまったく必要のない形だけの結婚なんだ。

 傷つきはしない。全部今さらだ。

「それに君の事情を知って、俺ならどうにかできるのに、なにも知らないふりをしたら俺は一生後悔する」

 続けられたのは同情や憐れみではなく、迷いない意思だった。

 彼は警察官なんだ。困っている人間を放っておけなくて、見て見ぬふりができない。この結婚は彼のためだけでなく、私への思いやりも少しは入っているんだ。
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