失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「家の問題に、勝手に介入して申し訳ありません。ですが逆です。未可子さんと結婚するから、ではなく結婚したい彼女が大切にしているものも守りたいと思ったんです」

 真っすぐに告げた光輝さんに、父も母も目を見開いて硬直している。私も同じだった。言葉だけでなく、実際に彼は結婚する前から大林さんとの問題を解決していた。

 簡単なようでそれがどれほど難しく労力が必要だったかは、大林さんとやり取りしてきた両親も身に染みているだろう。

 父は改めて、頭を下げた。

「光輝さん、未可子は長女なのもあってしっかりしているようで弱音をなかなか吐けないところがあるんです。いつも私たちにも気を使って、妹を大事にする優しい子です。どうぞ、よろしくお願いします」

 母も深々と頭を下げ、仰々しさに照れくさいような、申し訳ないような妙な気持ちになる。

「お、お父さん、お母さん。やめてよ。それに私、気を使ってないよ。お父さんとお母さんが大好きで、可南子のこともかわいい。それだけよ」

 慌ててフォローするが、本心だ。自分の家族が好きで誇りに思っている。

「こちらこそ至らない点もありますが、必ず未可子さんを幸せにします」

 光輝さんがしっかりと返す。隣で聞いていた私は、まともに彼の顔が見られない。私は冷静に受け止めないと。彼の誠実さは私に対する想いではなく職業からくるものだ。必死に言い聞かせながらも頬が熱くなるのを感じていた。

 そろそろ夜の営業に向けて仕込みがあるので、解散の流れになる。この連休は予約でいっぱいなのだが、改めてカルペ・ディエムでも実家でも光輝さんとふたりで食べに来てほしいと別れ際に念押しされた。
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