失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
「どうして……」

 タイトルは口にしていないはずだ。

「未可子が小学生だった頃に放送していたもので、インパクトの強いラストシーンを聞けば十分だ」

 実際に観たのか、知識量や記憶力に驚く。

「光輝さんは、ほんの少しの情報で、なんでもわかっちゃうんですよね」

「そうでもないさ」

 否定したい気もするが、軽くやり取りを交わし、勢いついでに今度は私から問いかける。

「光輝さんは怖い映画とか平気でした?」

「わりとなんでもいける」

 たしかに、光輝さんって現実主義そうだから、ホラーとか見ても冷静な気持ちで受け止めそう。

「ただ、この職業についてから警察ものはあまり楽しめなくなったな。現実と違う部分に目が行ってしまって」

「だいたい、キャリア組って悪く描かれますよね」

 事実を隠蔽したり、現場の刑事たちを見下したり。なんとなく憎まれ役が多い気がする。

「実際、あんな対立はない」

「そうなんですか?」

 意外だ、と言っては失礼か。でもたしかに私のイメージするキャリア警察官はああいうドラマや映画の影響が大きいかも。

 もっと聞きたい。こんなに光輝さんと話したのは初めてかもしれない。

 けれど、確実に睡魔が私の瞼を重くさせる。

「おしゃべりはここまでだ。寝よう」

 彼の提案におとなしく従う。隣にいる彼とは距離があって、宣言通り触れ合いなどいっさいない。でも、どこか心は満たされていた。
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