失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 思い出して唇を尖らせていると、光輝さんが小さく噴き出した気配がした。改めて顔を見ると、先ほどとは打って変わって口もとに手をやり、笑いをかみ殺している。

 意外な彼の表情に目が離せない。

「それは……災難だったな」

 光輝さんの言葉に、慌てて我に返る。

「まったくです。でもついかわいくて妹の言うことを聞いちゃうんですよ……光輝さんもそうですよね?」

「どうだろうな。俺はそこまで優しくない」

 確信をもって尋ねたのに、彼はあっさりと否定した。おかげですぐに反論する。

「優しいですよ。光希に頼まれたから、私を迎えに来てくださったじゃないですか」

 出会った頃から、そうだ。妹と親しくしている私を探る意味もあったのかもしれないが、妹の友達というだけで、よく気にかけてもらった。

 余計な感情はいっさい受け取ってもらえなかったけれど――。

「あれは、未可子だから迎えに行ったんだ」

 苦い記憶から目の前の彼に意識を戻す。光輝さんは、それ以上ななにも言わず、ただ私を見つめてきた。

 どう……受け取っていいのだろう。

 尋ねられず、妙な沈黙が降りてくる。

「今、その映画の最新作が公開されているらしい」

 私は目を丸くして口火を切った光輝さんを見る。
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