失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 ここまで大事にしているのは、単純に気に入っているだけなのか。それとも別の理由がなにかあるのか。少しだけ、自惚れてしまいそうになる。

 さっきから彼女の発言や行動に戸惑わされてばかりだ。俺らしくない。

 光希に結婚を報告した際、光希未可子が唯一付き合った男からあまり大事にされずいい別れ方をしなかったとこっそり聞かされた。異性との触れ合いに消極的なのも。

『未可子を大事にしなかったら、お兄ちゃんでも許さないから!』

 釘を刺されなくてもわかっている。俺は彼女にとって避けられるほどの相手だったのだ。未可子に無理をさせるつもりはない。契約結婚を自分から提案した以上、夫婦として距離を縮めていくよう努力するつもりだ。

 自身の左手の薬指にはまっている真新しい指輪を改めて見る。自分が指輪をつける日がくるとは思いもしなかった。

 結婚するなら指輪は必要だろうと、未可子の好みを聞いたが、彼女はなかなか希望を口にはしなかった。それが遠慮だとわかっていても、ついもどかしく感じる。

『決めてもらわないと困るんだが』

 そう言って、ようやくブランド名を告げた未可子を連れ、店に見に行った。店員にあれこれ勧められ、戸惑いつつも最終的には未可子の意思で指輪を決めたので、安堵する。

 異性を相手にここまで苦戦するのは初めてだ。でも楽がしたいわけでも、適当にやりすごせばいいと思っているわけでもない。

 仕事も結婚生活もひと筋縄ではいかないのは百も承知だ。それでもどちらも俺が心から望んだものなんだから、絶対に手に入れてみせる。
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