失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 気を取り直し、データベースにアクセスし、過去の情報とゼロから上がってきた最新の報告とを合わせる。ここにきて狐火の活動がやけに盛んになっている。

 絶対に足がつかないと踏んでいるのか、なにかに追い立てられているのか……。

 そこで険しい表情をしている自覚があり、金平の指摘を思い出し、額に手を置いて軽く息を吐く。

『結婚の決め手は?』

 なんだったのか。未可子は忘れられない相手ではあったが、そこまで深い付き合いはしていない。ただ――。

『なら、俺と結婚するか?』

 相変わらず誰かのためにひとりでがんばっている未可子に、気づけば結婚を申し出ていた。自分の発言に驚きつつも顔には出さない。彼女はどんな反応を示すのか。

『ふっ……ふふ……ふふふふ』

 すると、目の前には信じられない光景が広がっていた。未可子のこんなふうに笑った表情を見るのは初めてだった。

 笑ったとしても、つらいのを耐え、それを悟らせないような痛々しいものしか覚えがない。昔から俺の前では、声も表情もどこかこわばっていた。

 こんな顔……するんだな。

 ああ、そうだ。俺が知らなかっただけなんだ。この笑顔を向けてもらえなかっただけ。

 それがどうしてこうも腹立たしく感じるのか。彼女との関係を考えたら当然だ。

 ただ……よく見ると部屋には昔、俺があげたウサギのぬいぐるみが飾ってあった。本当にこのキャラクターが好きなんだな、と思う一方で、それだけがやけに年季が入っている。そして、ほかにこのキャラクターのものは見あたらない。
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