失恋相手と今日からニセモノ夫婦はじめます~愛なき結婚をした警視正に実は溺愛されていました~
 左手の薬指には、ひと際輝きを放つ結婚指輪をはめていた。まだ慣れずに、何度も手を確認してしまう。

 結婚指輪に関してはあくまでも形だけのものだろうからと意見するつもりはなかった。言える立場でもない。しかし光輝さんから決めてもらわないと困ると言われ、ためらいがちに好きなブランド名をあげた。

 すると彼はさっそくその店へ向かい、そのまま結婚指輪を購入する流れになる。店員にいろいろ勧められたのもあるが、最後は自分の気に入ったデザインを選んだ。

 緩やかなウエーブラインがなんとなく目を引き、メレダイヤモンドが散らばっていてセンターには私の誕生石であるアメジストが埋め込まれている。

 ここまで宝石がついていないものでも、と思ったのだが、店員はもちろん光輝さんにも勧められ、これに決めた。後日、光輝さんから渡されたときに、一生大事にするつもりだと伝えた。

 一生……つけられるのかな?

 光輝さんとの関係は相変わらずで、同じベッドで寝るものの体を重ねるどころか、キスも手をつなぐことさえない。

 それでも会話は増えた。正確には私が彼を質問攻めしてしまっているところがある。

 料理は任せてほしいと手をあげたので、彼の好きな食べ物や苦手なものから始まり、好きな音楽や読んでいる本など、光輝さんは嫌な顔ひとつせず真面目に答えてくれた。チョコレート以外でも甘いものはわりとなんでも好きらしい。

 出されたものは基本すべて食べるけれど、よくよく聞くとパクチーやセロリといった香りが強めの野菜はあまり得意ではないんだとか。そう告げたときの光輝さんの気まずそうな表情が、なんだかかわいらしくてつい笑ってしまった。
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