恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「幾つになっても落ち着かない娘で……本当に峰岡さんにもらっていただきたいわ」


藤宮社長夫人が心底残念そうにため息を吐く。


「私に夕実さんはもったいないですよ」


やんわり断る専務を、一歩下がった場所から邪魔にならないように見つめる。

この数年間で多数の招待客相手に幾度も経験したやりとりだ。

入社当初はこういった場になぜ連れ出されるのか疑問で、慣れない会話や雰囲気に圧倒されてばかりだったが、最近では落ち着いて周囲を見渡せるようになってきた。

様々なプレゼンの場でも物怖じしなくなったのは有難いが、一方で過ぎていった年数の長さを思い知る。

ひと通りの挨拶を済ませた私たちは人の輪から離れた。


「今日はありがとう、助かったよ」


「専務、パーティーはまだ終わっていませんよ」


開始から一時間程度しか経っていない。

今日はもう暇を告げるつもりなのだろうか。


「ああ、でも長谷部をここに連れてくるまでが俺の役目だったから。あとは任せるよ」


「……なんのお話でしょう」


「――そうだな、エスコート交代だ」


突如背後から響いた低い声に、体中に甘い痺れがはしった。

緊張する体をなんとか動かして振り向けば、変わらない美麗な面差しの旧友が立っていた。
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