恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
「ふ、藤宮くん?」


「……婚約者なんだから、いい加減に名前で呼んで欲しい」


「そんな、いきなりは無理」


「俺はずっと名前で呼んでいるだろ」


無理に決まってる。

心の準備ができない。


「ほら、呼んで?」


こんなときに限って空気を読んでくれない彼は、強引に促してくる。


「き、匡、くん?」


「なんで“くん”付け?」


「き、匡……」


「なに、眞玖?」


名前を口にした途端返された、甘やかな反応に心が震える。

嬉しいけれど恥ずかしくて、心が落ち着かない。

ただ好きな人の名前を呼んだだけで、どうしてこんなにも満たされた気持ちになるんだろう。


「これからはずっとそう呼ぶように」


ふわりと相好を崩す姿に、胸が痛いほど締めつけられると彼は知っているだろうか。

私の恋心の重さを知ったら、匡は驚くに違いない。

学生時代の匡は、どんな魅力的な女性たちにも縛られるのを疎んでいた。

だからこの重すぎる想いや独占欲は上手に隠さなければ、きっと嫌われてしまう。

匙加減も距離感もうまくわからない、恋愛下手の私に上手くできるか、すでに自信がない。

この恋を守るためにこれから先、私はどうしたらいいのだろう。
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