恋慕~再会した強引御曹司に甘く囚われて~
下唇を最後に軽く舐め、そっと私の唇を解放する。


「……ずっと一緒にいたい、離したくないな」


甘い告白に頬が一瞬で熱をもつ。


「体、無理するなよ」


コツンと私と額を一瞬合わせ、匡はゆっくり踵を返す。


「匡、待って……!」


「また連絡する」


暗闇に紛れて小さくなっていく後ろ姿を、ただ見つめる。

人目につくマンション前でする行為ではないが、このときの私は冷静さを失っていた。

匡に会ったら伝えたいとひそかに心の中に閉じ込めていた想いや出来事は無数にあったのに、いざ本人を前にすれば胸がいっぱいになり、なにひとつ言葉にできなかった。

友人のときは自分の気持ちを隠すため制御していたからか、嫌味や軽口すら叩けたし、自分の都合を押しつけもしていた。

けれど、今はできそうになく、どんどん自信を失ってしまう。

五十嵐兄妹について尋ねもできない私の態度は、果たして正解なのだろうか。






 
















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