私達、犬猿の仲ですよね? 原作知識なしの悪役令嬢が許嫁解消したら、執着ツンデレ系の第二王子から求婚されました!
「あれ? 偽っていたのは、髪と瞳の色だけなの?」

 そこに佇んでいたのは、背中に背負うオーラとそっくりな銀の髪と、ミステリアスな紫色の瞳が印象的な少年だった。
 まさか顔立ちがアルベールとそっくりのまま、変化しないなど思いもしなくて……。
 不思議そうに、問いかければ。

 驚愕で目を見開いた偽物は、許嫁とは似ても似つかない声で呆然と呟いた。

「な、なぜバレた……!」
「あのさぁ。私を誰だと思ってるわけ? 未来の天才魔術師だよ? この程度の変身魔法を解除するなんて、余裕なんだから!」
「師匠の魔法は、誰にも破れないはずなのに……!」

 こいつの言う師匠が、誰かわからないけど……。
 こんな低レベルな魔法の解呪は、私にかかれば朝飯前だよ!
 そもそも完璧な魔術なんて、この世には存在しないし……。

「解除できなきゃ、なんの力も持たない人間が不利じゃん。一方的に誰かを虐げる力なら、私はいらない」
「……貴様が魔法を持っていようが、いまいが。俺には関係のない話だ……」
「ま、そうだけど。あんたをアルベールに仕立て上げた人間が、強い力の持ち主だって言うのはすぐにわかったよ。私じゃなきゃ、入れ替わりに気づけなかったかも」
「あ、当たり前だ! ガデムの魔法は凄い!」
「術者が強い力の持ち主でも。それを使役するあんたが弱くちゃ、話にならないよ」

 事実を隠したところで、なんの意味もない。
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