孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
湯上がりの体を湯着に包み、二人は部屋へ戻った。
障子越しにほのかに灯る明かりと、畳の香りが心を落ち着ける。

ほどなくして、仲居が静かに部屋に膳を運んできた。
広げられた机の上には、目にも美しい懐石料理が並ぶ。

金色の縁があしらわれた器に、季節の前菜。

柿なます、銀杏と海老の白和え、炙り鴨肉。

木箱を開ければ、蒸し立ての松茸の土瓶蒸しが立ちのぼる。

「うわあ……」
紬は思わず声を漏らした。
まるで芸術品のようなひと皿ひと皿に、目を輝かせる。

「すごいな、これは……」
隼人も箸を手に取りながら、照れたように笑った。

「いただきます」
二人で手を合わせると、まずは小鉢に手を伸ばす。

一口食べて、紬は思わず目を見開いた。
「ん……お出汁がすごく上品……」
その表情に、隼人も満足げに頷いた。

酒器には地元の銘酒がそっと注がれ、ふたりで少しずつ酌み交わしながら、ゆっくりと箸を進める。

焼き物は、脂ののった金目鯛の西京焼き。

炊き込みご飯には、旬の栗ときのこがたっぷりと混ぜ込まれている。

「こんな贅沢、していいのかなって思うよね」
紬が笑いながら言うと、隼人は湯上がりで少し赤らんだ顔で、ふっと柔らかく笑った。

「君と一緒なら、何食べてもごちそうだけどね」

紬は口を尖らせながらも、嬉しそうに笑い返した。
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