孤高の弁護士は、無垢な彼女を手放さない
夕食を終え、ぬるめの地酒をちびちびと飲んでいた紬は、すっかり頬を赤らめていた。
いつもより声がほんの少し高くて、言葉の端が柔らかい。

「ねぇ、隼人くん……」
隼人の隣にぴったりと寄り添い、袖を引っ張る。

「ん?」
彼が横を向くと、紬はとろんとした目で見上げてきた。

「なんかねぇ……隼人くんのこと、すっごくすっごく好き……」
言葉を噛みそうになりながらも、満面の笑みでのろける。

隼人は思わず噴き出しそうになったが、可愛すぎて笑えず、ぎゅっと抱き寄せた。
「……急にどうしたの?」

「だって……なんか、ほわほわしてて、嬉しくて……。ねえ、もっとくっついていい?」

そう言って、紬は遠慮も忘れて彼の腕にしがみつく。

ぴとっと顔を押し付けて、猫のように身を預けてくる。

「甘えたいモード入った?」
「うん。隼人くんしかだめ……だーいすき……」
言いながら、胸に頬をすり寄せてくるその姿はまるで甘えた子犬。

隼人は目を細めて、彼女の背中を撫でながら「そっか。じゃあ今夜はずっと甘やかしてあげようか」と囁く。

「ほんと? じゃあ、隼人くん専用まくらになる……」
「……それ、俺のセリフじゃなかった?」
「いいの、今日は私がやるの」

そう言って、隼人の膝の上にちょこんと座り、首に腕を回す。
酔いのせいか、照れもなくて、まっすぐで、可愛さが大洪水だった。

「……紬、そんな顔されたら……麻酔かけたくなるよ」

「だめ。今日はわたしが甘える日だから、ずっとそばにいて、いっぱい頭なでなでして……」
甘えながらも、彼の唇をじっと見つめる仕草に、隼人の理性もふわりとほどけていく。

「……はいはい。君のお願いは、全部叶えます」

そう言って隼人は、紬の髪をそっと撫でながら、穏やかな口づけを落とした。
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