今日はあなたを困らせたい
「遠藤?」

去って行く私を、あいつは呼び止めようとしている。

「おい、遠藤!」

好きなだけ、呼べばいい。

でも、私は立ち止まらないから。


するとあいつは、とんでもない事を、言い始めた。


「寂しいのか?」

「はい?」

訳が分からな過ぎて、思わず振り返ってしまった。

「そんなわけ、ないか。」

あいつは、なぜかニコニコしている。


「遠藤思織。今は、高層マンションに一人暮らし。兄妹はなく、一人っ子。母親が父親の浮気を知って、家を出て行き、両親は離婚。父親は愛人だった女性と、昨年……」

「ちょっと!」

あいつは人のプライベートを、外でペラペラ話し始めた。

「言っておくが、俺もその程度で、君を不幸だとも思わないし、可哀想だとも思わない。」

「何ですって!?」

私はあまりの言葉に、身体が飛び上がる程、驚いた。

自慢じゃないけど、この話をすると、同情しない大人はいなかったって言うのに!

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