策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす

「……エリックと会おうと思うって聞かされたときは、心臓が縮んだよ」
「すみません。せっかくの休日だったのに巻き込んでしまって」
「いや、ちゃんと話してくれてありがとう。頼ってくれて本当によかった」

そう言って、彼は抱きしめる腕に力を込める。伊織の胸に顔を埋め、千鶴は噛みしめるように呟いた。

「迷惑をかけてしまうかもしれないけど、私を大切に思ってくれる伊織さんや家族を傷つけたくなかったから」

昨日エリックから電話を受けたものの、千鶴はその件について両親や兄には話さなかった。

ホテルに来いと言われたなんて伝えれば絶対に止められるに決まっているし、まだ目を付けられていると知れば心配させてしまう。

『話せばわかってくれるかもしれない』『言いなりにならなければ大丈夫』

今までだったらそんな風に考え、ひとりのこのこ部屋まで行っていたかもしれない。

けれど、いくら店のためとはいえ、今の千鶴には黙って会いに行くという選択肢は初めからなかった。

『頼むから、俺のいないところで傷つかないで』

千鶴が傷つけば、それ以上に傷ついて悲しむ人がいる。そう伊織が教えてくれたから。

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