策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす

たしかに日仏共同研究のプロジェクトが立ち上がったのは、リュカが参加表明をしてくれたおかげだ。

エリックはそれを自分が橋渡ししたおかげだと思っているらしいが、実際に伊織が彼とコンタクトを取ってみると、リュカは高校時代の同級生について一切覚えていなかった。

彼がプロジェクトに参加する気になったのは、同級生の顔を立てたわけでも説得に応じたわけでもなく、単純にデジタル庁のAI教育研究に興味を示しただけに過ぎない。

にもかかわらずエリックは千鶴に対し、『プロジェクトは自分の胸ひとつでどうとでもなる』といった脅し文句を使っていたというのだから、呆れてものも言えない。

『お前は僕を接待する側の人間だろう。偉そうにするな! 父に頼めば、お前なんか――』

そしてここでも父親を盾に威張り散らすエリックだったが、突然その父が目の前に現れたことでみるみるうちに勢いをなくし、ついにはダニエルのボディガードによって連れ出されていった。

(これでようやく面倒な男を片付けられたな。それにしても、彼女の強さには驚かされる)

彼女にも話した通り、ダニエルは息子と違って真面目で誠実な人間だ。彼は二度とひだかの敷居をまたぐつもりはなかっただろうし、伊織が渡したエリックについての調査資料を読めば、現在の職を辞すと言い出しかねない。

そんなダニエルに、千鶴は『ぜひ、またひだかにいらしてください!』と声をかけた。

エリックにされたことを考えれば、もう関わりたくないと思っても不思議ではないはずなのに、彼女はそうではなかった。まさかそんな風に言うとは思わなかったし、ダニエルも目を丸くしていた。

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