策士な外交官は計画的執愛で契約妻をこの手に堕とす
着替えを済ませてヘアメイクを施してもらい彼の腕に手をかけると、いよいよ既視感のある展開に落ち着かなくなった。どうしてもパリの夜を彷彿とさせるのだ。
そわそわしているせいで身体が硬くなり、慣れないヒールもあいまって歩く姿はぎこちない。
「どうかした?」
「いえ。それより、ご挨拶はいいんですか?」
多くの人がこちらを見てそわそわしているような気がする。
「今日は仕事というより、可愛くドレスアップした俺の婚約者を見せびらかすのが目的だからね」
「またそうやってからかって」
パリでの観光中も、こうしてよくからかわれた。知り合って間もないのに、ふたりで喋りながら街中を歩き回るのが本当に楽しかったのを思い出す。
「からかってない。パリで着てたドレスもよく似合ってたけど、今日のドレスはより可愛らしくて俺好みだ」
「も、もうその辺にしてください……」
千鶴が顔を真っ赤にして降参すると、伊織は「これからが本番なのに」と肩を揺すった。