旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
 熱を出した夜にもう見られているからという気持ちと非日常の感覚が重なって、メイクは落としたきり、服装もルームウェア姿だ。下着はナイトブラで大丈夫かな、とシャワー上がりに少し迷ったけれど、いやなにを迷う必要が?とひとりで恥ずかしさを噛み締めたばかりだ。
 そのときの羞恥が蘇ってきて顔が熱くなり始めた頃、対面に座った和永さんが苦笑いを浮かべながら口を開いた。

「結局今日もほとんど君に支度させてしまったな。あのサラダも手作りなんだろう?」
「はい。昨日はもう熱がなかったので、病院から戻ってから暇でつい多めに」

 本当に好きなんだな、と笑いかけられてなんとなく気恥ずかしくなる。
 料理の話だよ、流れ的にそれしかないでしょ、と自分に言い聞かせつつ「ええまぁ」と濁してしまう。

「いつもメモつきで冷蔵庫に入れてくれてるのも、実はかなり助かってる」
「……本当ですか?」

 思わず窺うような調子で訊き返してしまった。結婚記念日の夜は要らないって言ったくせに、という恨みがましいニュアンスが無意識のうちにこもっていないか急に不安になって、でも。

「ああ。帰ってきて、真っ先に冷蔵庫に向かってるくらいには楽しみにしてる」

 私に気を遣っている口ぶりではなかったから、心底ほっとしてしまう。
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