旦那様、離婚の覚悟を決めました~堅物警視正は不器用な溺愛で全力阻止して離さない~
「はじめまして。妹がいつもお世話になってます、姉の板戸榛奈です」

 立ち上がってにっこり笑った板戸さんのお姉さん――榛奈さんというお名前らしい――を、私はとても直視していられない。
 なんとか頭を下げ、目を逸らした状態で自分からも名乗り出る。

「あっ、は、はじめまして、あの、妹さんの同僚の、能見薫子と申します……」
「知ってる。能見和永の奥さんだよね」

 反射的に頭を上げた先で、にこやかに微笑む相手と目が合った。
 相手にも聞こえたのではないかというほど高らかに、ひゅ、と喉が乾いた音を立てて鳴る。

「昨日、家に帰ってないんだって?」

 ……なんなんだ、この状況。
 微笑んだまま眉尻を下げた榛奈さんを前に、私は微動だにできず立ち尽くすしかできなかった。
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