不器用な君のしぐさ
「ねぇ、司馬さんって彼女いるのかなぁ?」
「えー、どうだろうね。」
「あんなにイケメンなんだから彼女くらいいるでしょ〜!」
「でもさ、全然女に興味なしって感じじゃない?」
「そこがいいんだよ!あのクールな感じがさぁ!」
ある水曜日の午前中。
勤務中だというのに、後輩の女子社員たちは、"社内一のイケメン"と呼ばれている司馬一颯さんの話で盛り上がっている。
確かに総務課は、他の課に比べて水曜日は業務が少ないけど、それにしても喋りすぎだ。
わたしはパソコンと向かい合い続けゴリゴリに凝った肩を回し、両腕を上に伸ばして伸びをした。
はぁ、、、疲れた。
珈琲でも淹れて来ようかなぁ。
そう思い、わたしが席を立つと、わたしの隣のデスクで"社内一のイケメン"の話に華を咲かせていた後輩社員が「紗和先輩、どこ行くんですか?」と訊いてきた。
「疲れたから、珈琲淹れてくる。」
「なんだぁ!司馬さんのところに行くのかと思いました!」
「何で?秘書課に用事なんてないよ。」
「だって、司馬さん見るだけで目の保養になるじゃないですかぁ!」
「目の保養ねぇ。」
そんな目の保養が必要なら、それくらい仕事してくれよ。
と思いながら、わたしは総務課を出て給湯室へと向かった。
すると、廊下を歩いて居ると、エレベーター前にA4サイズの茶封筒が落ちていることに気付く。
わたしはそれを拾い上げると、中を確認してみた。
中に入っていたのは、秘書課の書類だった。
秘書課の書類、、、
さっき"秘書課に用事なんてない"なんて言ったばかりなのに、結局行く羽目になってしまったじゃない。
わたしは一つ小さな溜息をつくと、秘書課へと拾った茶封筒を届けに行くことにした。
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