不器用な君のしぐさ

秘書課は、総務課と同じ階にあり、そのまま真っ直ぐ歩いて突き当たりにある扉が秘書課への入口だ。

そして、秘書課のドアをノックし、「失礼します。」とゆっくりドアを開けてみると、そこには、、、

えっ?

わたしはそこに居た人物を見て驚いた。

"社内一のイケメン"、クールでいつも冷静沈着、無表情の今わたしの目の前にいる司馬さんが、頭を抱えながら「ぁ゙ぁ゙っ!!」と吠えていたのだ。

わたしは見てはいけないものを見てしまった気がして、そっとドアを閉めようとしたが、時すでに遅し。

司馬さんと目が合ってしまい、彼はわたしを見ると「あ!」と言って、早足でこちらへ歩み寄って来たのだ。

「それ、、、」
「えっ?あ、」

司馬さんの視線の先にあったのは、先ほどエレベーター前で拾った茶封筒だった。

「エレベーター前に落ちてたので、届けに来ました。」

そう言って、わたしは司馬さんに茶封筒を差し出し、司馬さんはそれを受け取ると「わざわざ届けさせてしまって、悪かったな。」といつもの無表情で言った。

「いえ、では、わたしはこれで。」

と、立ち去ろうとすると、「ちょっと待て。」とわたしの腕を掴み、秘書課の中へと連れ込むと、司馬さんはドアを閉めた。

「な、何でしょうか、、、」

わたしがそう訊くと、司馬さんは無表情のまま「さっき、見たよな?」と言ってきた。

「何をですか?」
「いや、だから、俺が、そのぉ、、、」

司馬さんは無表情なのに、なぜか戸惑っているような口ぶりで、わたしは思った。

きっと、さっき渡した書類は大切な書類だったんだ。

それを無くしていつも"冷静沈着"なはずの自分が必死に探してるところをわたしに見られたから、焦っているんだ。

え、ってことは、、、わたし、口封じされるの?

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