街角ファンタジーボックス
 次の日もいつもと変わらぬ朝がやってくる。
雀たちが朝の歌を歌っている。 牛乳屋さんが郵便受けに牛乳瓶を入れていく。
 台所ではお母さんが忙しそうに朝食を作っている。
冷たい水で顔を洗ったお父さんは来たばかりの新聞を広げて読んでいる。
 朝食を食べ終わるとスーツを着込んだ父さんが颯爽と家を出ていく。
この町で働いている人たちはそれぞれに自転車を飛ばして走って行く。
 そんな父さんたちを見送るように子供たちが集団で歩いていく。
いつの間にか雀たちは何処かへ行ってしまってカラスが電線を占領している。

 朝食を済ませた母さんたちはいつものように掃除を始める。
ゴミ箱には昨日買ってきたケーキの包みが入っていたりする。
 娘時代にはそうそう買ってもらえなかったケーキをお父さんたちはお土産に買ってくる。
バタークリームの少々固めのケーキだ。
 居間のど真ん中にはいつも父さんが晩酌をしている卓袱台が有る。
ずいぶんと長く使っている沁みだらけの卓袱台。
 玄関にはカバーを掛けた黒電話が置いてある。
友達の家にも会社にも置いてある黒電話。
 そして知り合いがいつとなく誰となく上がり込んでは四方山話をこぼし合う。
いつの間にか時間を忘れて話し込んでしまうから洗濯していることも忘れている。
 思い出して戻ってはみるけれどいったい何時間経っているのやら?
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