とある村の怖い話
「んん……」
小さな声に気がついて達也が手を止めた。
視線を向けると気絶していた美加が目を覚ましたところだった。

上半身を起こして周囲を確認し、達也と視線がぶつかる。
「あなた、誰！？」
闖入者に美加がカッと目を見開く。

「やばい！　達也、逃げろ！」
雄一が美加の体を羽交い締めにして叫んだ。
美加が雄一の腕の中で激しくもがく。

「誰か来て！　誰か！！」
「叫ぶな！　静かにしてろ！」
雄一が美加の口を塞いでも、その手に噛みつかれてしまった。

雄一からの拘束が緩んだすきに身を捩って立ち上がる美加。
その拍子になにかが地面に落下した。
カランッと音が鳴ったが、美加本人は気がついていない。

「鍵だ！」
雄一がハッと息を飲んで落下したそれを拾う。
それは銀色の小さな鍵で、雄一の足を拘束している金具にピッタリと合う。

「誰かお願い！　すぐに来て！」
達也が叫び続ける美加の体を後ろから羽交い締めにして押し倒した。
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