ページのすみで揺れていたもの
ぼんやりとした視界に、白い天井が映った。

蛍光灯の光。機械の音。どこかで誰かが歩く足音。

聞き慣れた音と、見慣れた景色。

でも、私は――なぜか、横になっていた。

(……ここ、病院?)

身体が思うように動かない。
腕には点滴、顔には酸素マスク。

その瞬間、混乱と不安が一気に押し寄せる。

「……夢……?」

小さくつぶやいたその声に、すぐ応える声が返ってきた。

藤澤「夢だったら良かったんだけどな」

ハッとして顔を向けると、そこには藤澤先生が立っていた。
腕を組み、私を見下ろすようにして立っている。

「せんせ……」

言いかけたそのとき、胸の奥にざわっとした恐怖が広がった。

(なんで先生がここに……私、何が……?)

混乱する思考のまま、勢いよく上体を起こそうとしたその瞬間――

藤澤「バカ、動くな!」

藤澤の手が、私の肩をしっかりと押さえた。
驚くほど素早く、そして丁寧に。

藤澤「頭、打ってんだからじっとしてろ。」

その言葉に、ようやく自分の身体の状態が理解できた気がした。

頭に、確かに鈍い痛みがある。
だけど、それ以上に――なんで藤澤先生が、こんなに真剣な顔をしてるのかが気になった。

私は、そっと息を吐いた。

「……大丈夫なんですか、私」

「CTは特に異常なし。でも転倒時に頭を打ってるから、経過観察。最低一日は入院」

「……入院、ですか……」

ぼんやりとした声しか出なかった。
けれどその響きには、どこか“負けた”ような静けさがあった。

いつも“支える側”であるはずの私が、
いまは“支えられる側”になっている。

それを認めるのは、少しだけ悔しかった。

でも、藤澤の手がまだ私の肩に添えられていて、
その手の力加減が“無理やり抑える”ものじゃなく、“守る”ような温度だったことだけは――
ちゃんと伝わっていた。
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