ページのすみで揺れていたもの
ソファに横になったまま、
少しずつ呼吸が落ち着いてくると、
熱と汗で体がじわじわと重たく感じてきた。

「……水、飲めるか?」

頷くと、藤澤は準備してきたらしいバッグから
ペットボトルとタオル、体温計を取り出した。

「ほら、熱。測れ」

素直に受け取って、脇に体温計を挟む。

でも――
ピーッという音が鳴った瞬間、
私は反射的に体温計を引き抜きながら言っていた。

「37.2℃……です」

その声を聞いた藤澤は、
一拍置いてから、小さくため息をついた。

「嘘つくとき、声ちょっと上ずるよな」

「……っ」

「意外と元気そうだな、嘘つけるくらいには」

「……うるさいです」

布団の中で小さく返すと、
藤澤はそのまま体温計を取り上げて、
表示された数字をちらりと確認した。

「……39.4℃。盛りすぎじゃない?」

「……誤魔化すにも限界ありますね……」

情けなくて、また布団を深くかぶった。

でも、藤澤は何も責めなかった。
ただ、タオルを軽く濡らして額に乗せながら一言。

「隠す元気があるうちに来られてよかったな」

その言葉が、やけに静かで、
でもじんわり胸に染みてきた。
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