次期ホテル王として戻ってきたイジワル幼馴染に溺愛されています
「あ、なた、は……?」
「大した者ではありません。ただ、この和やかなラウンジで、あなた一人だけが泣いていたものですから」
そっとハンカチを差し出されて、受け取るよりも前に彼に握らされる。
私に声を掛けてきたのは、たいそう顔の整った品のある男性だった。パリッとしたスーツに身を包んだ彼からは、心を落ち着かせるようなムスクの香りがする。
男性はなかなか涙を拭おうとしない私からハンカチを奪うと、優しく頬に滑らせた。
「早く涙を止めないと、目が溶けてしまいそうです。それに、たくさんの人の視線を集めているようですし……」
男性がちらりと周りに視線を向ける。そこでやっと、自分が置かれている状況に気付いた。
――確かに、この空間で私だけが浮いてるわ……。
自分の異常性を自覚したからといって、今さら何処かに隠れることもできなければ、周りの人たちの記憶を消すこともできない。それに今も涙は溢れている。
「よろしかったら場所を変えませんか? とっておきの場所がこのホテルにはありますから」
男性に促されるまま、私は彼の手を取り立ち上がる。
――まさか、その彼が記憶の奥底に眠る幼馴染の"たっちゃん"であるとは知らずに。
「大した者ではありません。ただ、この和やかなラウンジで、あなた一人だけが泣いていたものですから」
そっとハンカチを差し出されて、受け取るよりも前に彼に握らされる。
私に声を掛けてきたのは、たいそう顔の整った品のある男性だった。パリッとしたスーツに身を包んだ彼からは、心を落ち着かせるようなムスクの香りがする。
男性はなかなか涙を拭おうとしない私からハンカチを奪うと、優しく頬に滑らせた。
「早く涙を止めないと、目が溶けてしまいそうです。それに、たくさんの人の視線を集めているようですし……」
男性がちらりと周りに視線を向ける。そこでやっと、自分が置かれている状況に気付いた。
――確かに、この空間で私だけが浮いてるわ……。
自分の異常性を自覚したからといって、今さら何処かに隠れることもできなければ、周りの人たちの記憶を消すこともできない。それに今も涙は溢れている。
「よろしかったら場所を変えませんか? とっておきの場所がこのホテルにはありますから」
男性に促されるまま、私は彼の手を取り立ち上がる。
――まさか、その彼が記憶の奥底に眠る幼馴染の"たっちゃん"であるとは知らずに。